NHKのアニメにもなって紹介された
漫画「へうげもの」(山田芳裕)の人気を受けて、戦国の武将で茶人でもあった古田織部の生き様と織部好みと言われた織部焼が再評価されています。
織部と志野は桃山時代、美濃で焼かれた2大茶陶です。
特に織部はそれまでの日本の陶器に見られなかった奇抜で斬新な色・形・デザインなどを備えた焼ものとして輝いています。
以前に
NHKの「美の壺・織部」でも取り上げられ、分かりやすい解説で好評でしたので一部再現してみましょう。
美の壺「織部」、第一の壺は
「緑にけしきを見よ」です。
織部焼は緑釉に彩られた幾何学模様に、ひしゃげた茶碗が有名です。
この織部の特徴でもある銅緑釉が大きな魅力の一つです。
TVの解説でその見どころを
日本陶磁協会理事の黒田和哉先生は「釉薬が流れるというのは、中国では失敗だと感じたんですが、日本では他の器と違う釉薬の流れがあることを美しいと感じたんですよね。釉薬の中のそういった変化を【けしき】と言って、見る人がいろいろ想像する。海の深さであったり、山の深さであったり、そういったことに青さということを想像する。」と指摘されています。
織部は当時中国南部で焼かれていた
交趾焼(華南三彩)にあこがれて作られたものといわれてます。
華南三彩の緑は全体にきれいな、緑釉がのっていますが、織部の方は緑の釉薬にむらがあって不完全でした。
そのむらのある緑釉を日本人は「けしき」と見立てて愛でたのです。
土壁のシミまでもけしきとして受け入れる国民性ゆえの独特の感性でしょう。
国宝の井戸茶碗も外人から見ればただのシミだらけのしょぼい、汚い茶碗にしか見えません?
日本人の感性はすべての事象を受け入れながら、見どころを発見していくという創造力があります。
織部焼の緑もそんな先人の目を感じます。
■ 総織部茶碗 径:11.5cm、高:6.5cm
小服茶碗というより小鉢・食器のような可愛らしさです。
発掘伝世品(発掘されたものが後世、大切にされ残ったものです)
欠けた口縁を同類の陶片で継いで直してあります。(そのアバウトぶりがまたいい!)
こういった修理を
呼び継ぎと言います。
見込みの中をのぞくと、どっぷりと掛った緑釉がビ―ドロ釉のたまりとなって、深遠な宇宙の果のガス星雲を思わせます。
胴には流し掛けられたムラのある緑釉がビ―ドロ状の流れ跡となって、まさに景色に森羅万象を見る思いです。
(おおげさ?・笑)
たかがこわれた破片に近いものですが、されど魅力あふれる一椀です。
昔、ある茶の人がこれを見て、高台が欠けているので、茶事には使えないね?・・・・と言われました。
現代の茶とはなんと窮屈なものか?
この魅力は傷を凌駕して余りあると思うのは病人の身贔屓か?(笑)
この織部茶碗はその後の研究でもう少し古く、室町と言えるものかもしれないと聞きました。
となると総織部というより、緑釉の碗といった方がよいでしょうか。
いずれ、織部のルーツをたどるにふさわしいものですね。
伝世の名椀にはもとより遠く及びませんが貧者の逸品です?。
下、昨年秋、開催された日本陶磁協会新潟後援会主催の「展観と茶会」で熱く講演中の黒田和哉先生
下、「展観と茶会」で公開された日本陶磁協会本部より持参された一期一会の 「左、織部茶碗、右 志野茶碗」 於:旧齋藤家別邸